もう遅かったんだと思うにはあまりに突然すぎて、感情に整理などつくはずもなく、それは、どうして早く手折らなかったのかという後悔という形で押し寄せてきた。
 I'm dried!聞きなれた声が叫ぶ。それにかぶって、いつだったかの春に冗談交じりに呟いていた台詞I'm dried!が耳の奥で再生されI'm dried!るのを  どうせ散るなら今すぐ自分で払ってしまいたくなるよ  いますぐ消してしまいたいI'm dried!のに、どこだ、スイッチは、みつからない。
 散るなんて思ってもみなかったんだそんなこと。
「ごめん、司馬君のこと好きだけど、もっと好きな人に出会ってしまったから」
 少し困ったように微笑んで、もう仕方ない、と続けた。
 音量を上げるべきかもしれない。
「だから、ごめんね。ありがとう」
 もう最大音量で鼓膜なんか破れてしまえばよかった。
 I'm dried!I'm dried!
 制服の中のプラスチックの塊には触れることさえ出来ないし、ヘッドホンからは相変わらず絶望的なシャウトが響き続けている。

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