「おれのこと嫌いなくせになんでついてくんの」 やさしく、尋ねて修兵は振り返る。笑ってはいない。歩いてきた背後は乾いていて、修兵の肩越しにもまた、先の見えない長い長い道が見えた。 「どうして、って?」 問い返すと修兵はしずかに口の端をゆがめた。わたしたちはもうずっと、こうして歩いてきたから、こういう表情を目にするのも初めてではない。それが「笑」ではなく「哂」だと知っているから、すこしかなしくなった。修兵は黙ってわたしの目を見た。返事を早く聞きたいのだ。歩く速度を変えずに、わたしは答えた。 「偶然よ」 「そんなわけあるかよ」 「あるんじゃないの。無い、とも言い切れないし」 「だって、ずっとだろ」 「そうねえ、ずっと、ここまで来ちゃったわね」 いつのまに、こんなに遠くまで来たのだろう。そういえばわたしは、この道のずっと始まりの方で、修兵のことが嫌いだったのだ。遠い遠いと思うけれど、わたしはその長さを正確には知らない。修兵も知らないのかもしれない。歩いて歩いて、走って、つかれて座り込み、思い出して立ち上がり、追いついて追い越して進んできた。ああ、辿ってきた、この道はどんな姿をしていただろう?前進への意欲が、急に途絶えた。 「修兵」 声は小さすぎて彼には聞き取れなかったらしい。わたしだけが立ち止り、修兵はもう振り向かずに歩いていく。おそらくは届かないであろう言葉を、なるべく穏やかに呟いた。 |